背景
中国における全国規模の大型総合証券会社である国信証券は、中国全土118箇所の都市と地域に57の支社、185の営業所を有しています。中国証券業協会が発表したデータによると、近年、国信証券の総資産、純資産、純資本、営業利益、純利益といった中核指標は、業界トップクラスにあります。
業界データによると、従来の証券会社の取引システムに標準的な性能として求められているのは、取引ピーク時に1秒あたり約1万件を処理する能力です。極めて多くのデータが集中する業種の一つである証券業界では、発展し現在に至るまでに高い価値を有する膨大なデータを蓄積してきました。業界の絶え間ない発展に伴い、日々発生するデータは最低でもTBレベルに達します。また、ビジネスを支えるITシステムやデータベースに対する高い同時実行性と低遅延性の要件も一層厳しいものとなっています。
課題と目標
証券業界では近年、マーケティングや顧客獲得の方法、AI単方向型インテリジェント口座開設、オフサイト業務の処理、オンラインライブストリーミング、ミニプログラム、ミニビデオといったインターネットを利用した手法などを含む、オフラインサービスのオンライン化が急激に進んでいます。また同時に、近年の証券市場の活況により、証券会社のユーザー数や同時実行数が大幅に増加しているため、ビジネスを支えるITシステムやデータベースへの要件も一層厳しいものとなっています。証券会社が包括的な発展段階に進むにつれ、証券業務の種類も日増しに増え、業務プロセスも複雑化し続けています。そのため既存の外国製集中型データベースアーキテクチャでは、新たなビジネスや新しい監督・管理の規定、そしてこれからの時代の内部統制管理における効率的な監視・管理のニーズに応えることが徐々に困難になっています。
証券業界はデータ集約型産業であり、発展し現在に至るまでに高い価値を有する膨大なデータを蓄積しており、現時点でも日々膨大な新しいデータを生み出しています。膨大なユーザーを抱えて膨大なデータを処理する証券業界では、昨今、これまで主に使用してきた外国製集中型データベースの弊害が徐々に顕在化し始めています。集中型データベースアーキテクチャは、計算とストレージの分離や自動スケーリング、データセンター間の高可用性に欠けているだけでなく、容量面ではボトルネックが生じており、垂直方向の拡張に依存した状態です。さらにビジネスの透明性や無感知の実現が困難で、コストも高騰しているだけでなく、自律制御と国産化という目標も達成されていません。
しかし、近年におけるデータベース技術分野の急速な発展に伴い、クラウドネイティブデータベース、NewSQL、分散型データベースなど、業界を代表するデータベース製品が登場し始めました。国信証券は、データベース分野の技術開発の動向と新技術を駆使した製品を理解し、証券業界の現状と自社のITシステムの実情を踏まえた上で、国産の分散型データベースは今直面している苦境を打破する能力を有しており、証券業界のビジネスシナリオのニーズに応えられると見込んでいます。
Tencent Cloudソリューション
Tencent Cloud CDB TDSQLは、国信証券の業務システムへの導入に成功しました。新システムにはTDSQL+NeoKylinシステム+海光サーバーが採用され、戦略的提携パートナーである深圳市華雲中盛科技股份有限公司と共同で証券システムのフルスタック国産化を実現しました。
新システムには、国信証券のOTCカウンターシステム、マネーロンダリング防止システム、人事労務管理システムなどが搭載されています。運用が開始されて以来、1日あたりの取引規模は1億元に達しており、特に取引開始や大引け時といったトラフィックがピークになる時間帯でも、円滑なデータ運用を確保できることから、証券会社の中でもトップレベルに君臨しています。今後も国信証券は、Tencent Cloud CDB TDSQLで稼働する業務システムを増やしていく予定です。
Tencent Cloud CDB TDSQLは、トラフィックが急増するシナリオでも、秒単位で自動障害復旧を行える金融グレードの高可用性機能を備えています。さらにテストにおいて顧客要件を数十倍も上回る超高同時実行性機能を組み合わせているということは、TDSQLをベースとした証券会社は、証券会社の従来のITシステムの性能要件を遥かに上回るとともに、1億人以上の株主にサービスを同時に提供できる能力を有し、さまざまな極端な相場の動きにも効果的に対処できることを意味します。
これと同時にTDSQLのHTAP機能は、証券システムがデジタル時代において高性能かつリアルタイムのオンライン分析機能を得られるよう支援でき、ビジネスのデジタルトランスフォーメーションの実現を後押しする基盤技術を提供します。
クラスターデプロイ機能の面では、CDBはコマンドライン、コンテナ、グラフィカルインストールを提供することができます。パーフェクトなインストール、テスト、検収、トレーニングのプロセスを備えており、1,800件を上回るインストール、デプロイの実績を有するとともに、「2地域3センター」や「多地点マルチセンター」のデプロイ機能も提供します。
提携による成果
国信証券は、TDSQL PGバージョンをベースとしたアンチマネーロンダリングシステムが、膨大なデータという環境下でも、性能、拡張性、高可用性、障害復旧、運用保守、コスト削減といった面で著しく改善され、TDSQL PGバージョンが分散型データベースとして証券ビジネスシナリオで応用する価値を生み出せることに気づきました。
分散型データベースは、1台のサーバーでは完結できない計算やストレージのタスクを実行する機能を有しており、分散型アーキテクチャの助けを借りて、システム全体の信頼性とスループット機能の向上を図ることができます。また、銀行、保険、証券といった金融業界では、銀行の基幹システムをはじめとする多くの成功事例があり、その安定性と信頼性は検証済みであり、金融グレードのデータベースの要件を満たすことができます。そして、HTAPを搭載した代表的なアンチマネーロンダリングシステムがTDSQL PGバージョンに基づく移行に成功したことにより、TDSQL PGバージョンに代表される国産の分散型データベースが証券システムの特定業務形態において、既存の集中型データベースに取って代わることのできる能力を有していることが証明されました。
全体的に見ると、今後しばらくの間、TDSQLの分散型データベースはいくつかのシナリオで国信証券の業務システムと置き換えることが可能です。また、製品の絶え間ないアップデートと最適化や技術の進歩に伴い、TDSQLはますます多くのシナリオで使用可能になることでしょう。